ステッチの妙味

みんな大好きステッチについて

お話します。

Ripo trenta anni 有明店です。

営業再開致しました。

都内は未だ緊急事態宣言下ではございますが、

また足を運んでいただけましたら嬉しく思います。

ブログも通常通り書かせていただきます。




ステッチには様々な種類がありますが、

テーラードの系譜や

レザークラフトや靴のためのステッチ

装飾としての刺繍もステッチです。

生地一つ一つにも、繋ぐ留めるなど縫うことによって

布を実用的にするためステッチが施されます。



その中でもデニムへの拘りがある方はステッチにもこだわりあるかと、

裾の始末へのこだわりがある方多く見受けられます。

そんな皆様へ

「漢は黙ってチェーンステッチ」

になっていませんか?

「チェーンステッチは丈夫で長持ち」

と思われていないでしょうか?

結論、チェーンステッチは頑丈ではないです。

一般的に使われるシングルステッチに対して、

チェーンステッチは丈夫さでは劣ります。

シングルステッチには上糸下糸の2本の糸を絡ませながら

点線のようなステッチを作り出すのですが、

チェーンステッチは1本の糸を

裏側で作った輪っかに表側から糸を通してチェーン模様を作り出すことで

表はシングル裏はチェーンになるわけです。

1本の糸ですので、決して頑丈な訳ではないです。

切れる解けるなど糸にありがちな事態では、1本の糸からなるため

ほどけてしまうなどのトラブルは起こります。

チェーン「鎖」という言葉のイメージから

頑丈な縫い方だと思われている方が多いのかと思います。

あくまで見た目がチェーンなだけで

概念がチェーンに等しい訳では無いようです。




では何故デニムの裾始末でチェーンステッチは人気なのか。

それは経年変化の中での味わい深さにあります。

布・生地が洗濯や乾燥によって収縮するのは有名だと思います。

デニムも例に漏れず縮む生地として有名ですが、

生地とは糸の集合体です。

1本1本の繊維を撚り合わせて糸に、

その糸を織るもしくは編むことで生地が出来上がります。

この1糸単位では小さな縮みが生地全体では大きな縮みとなって現れるのが

このいわゆるの縮むという現象な訳です。

チェーンステッチには糸が1本しか使われていません。

画像のポケット部分はシングルステッチ、

裾とサイドの接ぎはチェーンステッチです。

見ての通りより複雑な形のチェーンステッチの方が、

糸が縮む量は大きい訳です。

更に収縮幅は生地よりも大きく、

生地自体を歪めるほどに縮む為

ウエストベルト裏に注目ください。

上部はシングルステッチで

下部はチェーンステッチになっています。

上部側では布は綺麗に整っているのに対して、

下部側はボコボコとうねっているのがわかります。



これがチェーンステッチによる味わい深さの正体です。

デニム生地を糸で縮めてギュッと締めることでうねりを生み出し、

山に当たる部分と谷の部分の色の差が現れます。

明らかに同じ加工をかけている部分で、

ここまではっきりとした差が出てきます。

裾にチェーンステッチがあるものはよりわかりやすくうねりが発生しており、

画像の通りアタリのつき方がより顕著です。


逆にうねらない方がいい生地もある。

当たり前ですが、綺麗めなパンツにはシングルがあっています。

ブラックスキニーなどの綺麗よりのパンツはチェーンステッチではなく、

あえてシングルで始末するのも雰囲気を損なわない為の工夫であると思います。



その他にも、シングルステッチは伸縮性が無いことも特徴になります。

逆にチェーンステッチは伸縮性があるため、

ウエストヨークなどは概ねチェーンステッチが施されています。

デニムジーンズの縫製を見ても場所によってステッチが使い分けられています。

一概には言えませんが、割と以下のように使われていると思います。

ポケットやチャック部分はシングルで、

内股やジップ下からお尻までの股部分はチェーンです。

その他にもカンヌキという補強目的のステッチや

セルビッチ以外の生地やシャツなんかでも見る、

際の始末も、カバーステッチもしくはロックステッチと呼ばれるステッチの一つです。

デニムだけでこれだけのステッチが使われていますし、

物によってはもっとたくさんのステッチが施されます。



とここまでは分かる範囲で書いてますが、

わからないものがありました。

それが本日ご紹介したいものです。

パッチワークスカートのステッチに注目

このスカートの白いアクセントになっているステッチです。

ピンポイントステッチと呼ばれるそうです。

私のイメージではピンポイントステッチと聞いて、

ジャケットやラペルのあるコートが思い浮かんだのですが、

それとはまた違う特殊なミシンで縫われているものだそうです。

ラペルに施されるようなものはピックステッチというらしいです。

古着のコートやジャケットなんかはハンドステッチだったりするのですが、

今ではハンドステッチ風の雰囲気を出せるミシンがあるそうで。

ただ、このピンポイントステッチは

ピックステッチと同じような目的もありそうです。

テーラードに遠からずでした。

ラペルのステッチには

型崩れ防止の目的で施されていることが多いのですが、

細部にこだわる英国紳士的には

このラペルのステッチもお洒落ポイントに置き換える方もいたのだとか。

通常は生地と同じ色でなるべく目立たないようにするものですが、

あえてトーンを変えたり、

全く違う色を差したり、

ステッチ自体も通常と変えたり。

などこだわりオーダーもあるそうで、

スーツなどの統一感に1差し違和感を入れているそうです。

型崩れ防止の実用ステッチはそんなおしゃれ糸としても扱われています。


このピンポイントステッチも

実用とおしゃれな違和感を併せ持っています。

実用は普通にパッチワークですね。

パッチしてます、布を縫い合わせることです。

このデニムスカートにはベースオレンジの糸を使っております。

白い糸のデニム自体は世の中に出回っておりますし、

リポにももちろんあるのですが、

糸が平行に並んでいることが個人的に最大の違和感です。

かがり縫いのような並びではなく、

裏側がしっかりと絡んでいます。

見る限り原理はチェーンステッチに近いのですが、

糸の輪っかが糸に対して逆の方向を向いており、

輪っかも平行に並んでいます。

4枚分相当の生地を縫い合わせているような形になっています。

また2本糸であり、糸が表側でニ重に交差しており平行に並んでいる面では

裏側の糸の2倍の太さに見えています。

主張のために白い糸をしかも倍の太さに見えるステッチで。

理に叶ってますね。



よくわかっていない為、語彙力総動員で説明していますが、

よく見てくださればわかることしか言ってないので、

是非よく見てください。

パッチワークなので、

生地についても書きたかったのですが、他の方も書いてますし短めに。


3種類の生地を4色に落として

デニムを再構築したスカートとして作っています。

3種類は触ってみると意外と違うなってわかると思います。

厚みや滑らかさが全然違います。

同じ生地を色別で再構築はたまに見ます。

極端なこと言いますが、そういった生地は

履き込み続ければ色味が収束していき、

最終的には同じくらいのカラーパッチワークになりかねないです。

これは生地から違うので、脱色の限界に達しても雰囲気が変わったままを楽しめるわけです。

種類が違う事はそういった利点も生まれます。

ただ、そんなに履き込める方はいらっしゃらないと思いますが。


形についても見てください。

横にジップがきます。一見斜めストライプですが、

前後同じく袈裟方向にストライプしているので、

色味は対偶です。前後しっくりこないです。

だからこそ、横ジップの違和感を備えているのだと思います。



とことんまでパッチワークなスカートです。

このスカートを見ていて、

転調を繰り返すトーマスのテーマを思い出しました。

ちょっと前に流行ったやつです。

飽きが来ない曲です。

このスカートは変わっているRipoの服の中でも

いい意味で、断トツで変だと思いました。

変な服が好きなので、履いてみたかったです。

ジェンダーとファッションの関係をまたも恨んでしまった逸品。

お履きになれる方々は本当に羨ましい事この上ないです。

価格はそれなりですが、手間を見る限り

安いのではないかと思います。

デニム何本分ですかこれ。

2倍以内の価格で買える。

多分高くないです。

いや安いです。きっと安い。



男性も楽しめるようにチェーンステッチを前談に置きましたが、

言いたかったことは、

このスカートは安いです。

ありがとうございます。